今から約17年前。
16歳の少年のもとに、任天堂とリクルートの合弁会社「 ランドネットDD 」から電話がかかってきた。
この記事では NINTENDO64 ( ニンテンドウロクジュウヨン ) の周辺機器 64DD ( ロクヨンディーディー ) を使ったゲームコンテスト「 マリオアーティスト甲子園 」で入賞した話について、紹介していきます。
64DD
任天堂のゲームハード NINTENDO64 には「 64DD 」という周辺機器がある。
NINTENDO64 の本体下に取り付けて使う磁気ディスクドライブで、専用のディスクを差し込み、ゲームをプレイする。
64DD を手に入れるには、会員になる必要があった。
会員制通信サービスの運営元は、任天堂とリクルートの合弁会社「 ランドネットDD 」。
10万人限定で会員を募ったが、会員数は、1万人前後だったといわれている。
ランドネットの終了通告時、会員数は15000人であると発表された。しかし、実際は10500人強だったようだ。
出回っている数が少なく、かなり貴重。
64DD は入手困難な幻のアイテムとして、ゲームファンの間で知られている。
幻の1万人
私は幻の1万人のひとりだった。
64DD を手に入れるには「 クレジットカード 」という、16歳の少年には、きびしい条件があった。
母にお願いして、なんとか手に入れた。
ゲームが ( 任天堂が ) 大好きだったからだ。
64DD を手に入れた理由
「 64DD でスーパーマリオ、ゼルダの伝説の新作がプレイできそうだ 」
という期待。
10万人限定と、あおられた効果もある。
時計機能を内蔵しており、ゲーム性にも魅力を感じた。
「 いつの間にか地面に草が生えている 」
時計機能のおもしろさだ。
しかも 64DD でインターネットができる。
64DD は、夢がたくさんつまった NINTENDO64 の周辺機器だった。
マリオアーティスト甲子園
ゲームコンテスト「 マリオアーティスト甲子園 」が開催されることとなった。
16歳の少年は参加を決め、入賞を目指した。
審査員
- 伊集院 光 さん
- 漫画家・餅月 あんこ さん
- 64DD ソフト開発チーム
- クリエーター
64DD でメウビッシュがつくったムービー
つくったムービーは、ダンスムービー。
応募タイトルは「 踊る★ダンス捜査線♪ 」
ハンドルネームは「 ゲンガー大王 」とした。
こまかいことをやるのは好きだ。
64DD と専用ソフト「 マリオアーティスト タレントスタジオ 」で、アフロヘアのキャラクターをつくった。
そいつに、自分で考えたオリジナルなダンスの動きをつけていく。
遊び心をたいせつに。
ラップを意識し、音声入力のマイクで「 YO ! 」という自分の声をふきこんだ。
自分でつくった奇妙なボイスパーカッションのリズムに YO ! という声が、定期的に響き渡る。
リズムに乗ったアフロヘアのキャラクターが、おもしろおかしなダンスを披露していく。
よし、完成だ。
64DD へ電話線をつなぎ、作品をアップロード。
結果待ちとなった。
ダンスムービー部門賞受賞
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「 落選したのだろう 」
ところが、任天堂とリクルートの合弁会社「 ランドネットDD 」から電話がかかってきた。
なんと「 ダンスムービー部門賞受賞の知らせ 」だった。
コメントがほしいという。
「 暗中模索でした 」とコメントさせていただいた。
受賞者として「 3万円分の商品券 」を手にすることができた。
遊び心が、功を奏したのだろう。
会報誌「 ランドネットFAN 」によると、審査では、メッセージやテクニックなども重要視されたという。
マリオの名のつくゲームコンテストで入賞することができ、光栄でした。
まとめ
約1万人の任天堂ファンしかしらないゲームの世界が、そこにはあった。
当時2000年ごろは、インターネット黎明期。
回線の通信速度は、ひどいものがあった。
「 64DD とインターネットで、これからどんなことが起こるのだろう? 」
近未来へ対する期待とワクワクに、胸をおどらせた。
64DD で、友達ができた。
64DD で、インターネットのたのしさを知った。
64DD は、たのしかった。
けっして、忘れることなどできない。
ランドネットDD のサービスは、わずか1年ほどで終了。
短命だった。
流れ星のように、一瞬輝き、消えていった。
しかしたしかに私は、あの輝き「 ゲームでしかあじわえない感動 」を、目撃したのだ。
公開日:2017/06/03
更新日:2017/11/10